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心筋症とは

心筋症とは「心臓の機能不全を伴う心筋疾患」であり、その分類は下の表の如くであり、心臓の筋肉(心筋)が極端に厚くなることや(心筋肥大)、薄くなったり、硬くなったりする心臓障害で、心臓のポンプ機能が低下し心不全症状を引き起こしたり、不整脈を合併して放置すると突然死につながることもある病気です。

心筋の病気のうち、特定の原因による特定心筋症と、原因が少しずつ解明されつつある特発性と呼ばれる心筋症の二つに分類されます。ここでは特発性の心筋症のうち肥大型心筋症と拡張型心筋症を中心にお話します。

心筋症の分類
特発性心筋症
特定心筋症
  • 虚血性
  • 弁膜症性
  • 高血圧性
  • 代謝性
  • 全身疾患(自己免疫疾患、サルコイドーシス等)
  • 筋ジストロフィ
  • 神経・筋疾患
  • 感受性亢進・毒性疾患
  • アルコール性
  • 産褥性
(1995年世界保健機構/心筋症国際会議(WHO/ISFC)合同委員会定義を改変)

病気が起こる頻度でみると、肥大型心筋症は人口100人から1000人に一人の頻度でみられる循環器の外来ではめずらしくない病気ですが、拡張型心筋症は更にその10分の1以下の頻度でしか起こらない病気です。

診断は心臓肥大や心臓が大きくなる病気の原因のあるなしを検査することから始まります。高血圧心臓弁膜症など心臓肥大を生じる病気や、心筋炎や虚血性心疾患など心筋の動きが悪くなる心臓病は原因治療が出来ることが多く、その発見のための検査が中心になります。

心臓超音波検査は心臓肥大、心筋や弁の動き、心臓内の血流の観察等に大変有用です。心臓の核医学的検査(RI検査)心臓カテーテル検査なども重要です。また不整脈の合併症診断のためのホルター24時間心電図検査もしばしば行われます。

肥大型心筋症

心筋が厚くなる肥大型心筋症には心臓から血液の流出障害を伴う閉塞型肥大型心筋症と流出障害のない非閉塞型肥大型心筋症の二つがあります。

患者さんの約半数で家族内にも同じ心筋症の人がいるので遺伝が関係している傾向があり、最近の研究では心筋の蛋白質異常も見つかってきています。

1)非閉塞型肥大型心筋症

心臓全体や心室中隔(左右心室の隔壁部分)、側壁、心尖部(心臓の先端、図の右上)などの一部に肥大(非対称的肥大)がみれらます。

心臓のポンプ機能上障害を生じる事が比較的少なく、症状が軽いので検診の心電図や胸部写真で発見されることが多いようです。

2)閉塞型肥大型心筋症

肥大部分は左心室の中央部や、左心室から大動脈への出口付近で、血液の通り道をふさぐ(閉塞)様な肥大のため血液の流出が障害されます(図の右下)。

重症では全身への血液の送出が低下するために失神したり、心筋肥大のため心筋の酸素需要が増加し、運動時に血液量が不足し胸痛が起こることもあります。

肥大型心筋症からまれに心臓の筋肉が薄くなる拡張型心筋症タイプに移行することもあります。

治療: 心筋を保護し、心臓肥大進行防止のため "ベータ遮断剤" や "カルシウム拮抗剤" などを中心に使用し、内服治療で症状が改善することが多く、5年間の生存率も95%と良い結果です。

閉塞型では内科治療でも良くならない場合には肥大心筋を外科的に切除することもあります。生命に危険のある不整脈がある場合には薬物治療、更には特殊カテーテルを使用した治療を行うこともあります。

拡張型心筋症

心筋の筋肉の力の低下のため心臓のポンプとしての機能が低下し、多くは心筋の厚さも薄くなり、心臓の内部が拡張するのが拡張型心筋症です(図の左下)。肥大型心筋症と違い遺伝は少ないようです。

自覚症状としてはポンプ機能低下(心不全)によることが多く、最初は運動時の息切れや足のむくみなどですが、重症になると安静時にも呼吸困難が生じる様になります。心臓内部の血液の流れが悪くなり心臓内に血栓を生じて脳梗塞になることもあります。

治療: まず心臓の働きに応じた日常生活に切り替えることが重要です。心不全治療のため "ジギタリス剤" 等の強心剤、利尿剤、血管拡張剤が使用されます。

最近では 「アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬」、「アンジオテンシン受容体阻害薬」や「ベータ遮断薬」などの薬品が拡張型心筋症の進行を遅らせ、予後を改善する薬剤として有益とされています(下図)。

薬物治療拡張型心筋症の予後

また合併症の不整脈や血栓症の治療も必要に応じておこないます。

こうした内科的な治療が有効でない場合には、心筋の部分切除術(バチスタ手術)や、補助人工心臓、最近日本で始まった心臓移植などの外科的治療の適応となる場合もあります。

拡張型心筋症の生命予後は10年生存率でみると20年前には36%と予後不良でしたが、心不全の薬物療法や重症不整脈の薬物療法および植込み型除細動器によって最近(2000年)では73%にまで向上してきています。

拡張型心筋症の生命予後
年代
登録患者数
平均観察期間
死亡数

ACE阻害薬又はβ遮断薬使用頻度

年間死亡率
(1)1974-1982

374例

40ヶ月

169例

3.6%

13.4%

(2)1983-1990

82例

47ヶ月

15例

35%

4.7%

(3)1991-2000

100例

84ヶ月

21例

73%

3.0%

(1)はS57年度の厚生省特定疾患特発性心筋症調査研究斑の報告、(2)と(3)は北海道大学医学部循環病態内科での統計

札幌厚生病院循環器科のホームページ http://www.gik.gr.jp/~skj/