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心膜とは
心臓は厚さ数mm程度の支持組織である心膜に包まれています。心膜(右図のオレンジ色)は壁側心膜(右下の図)と臓側心膜の2枚からなり、その間の心膜腔内にはふつう10〜20cc程度の心膜液(右図の水色)が存在します。心膜の機能には、心臓の大きさやしなやかさを調節する機械的機能、摩擦の緩和や炎症を防御する膜機能、心臓の位置を保つ靭帯機能などがあります。心膜に炎症がおきますと心膜液が増量し、膜機能や機械的機能の障害が現れます。
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急性心膜炎とは
急性心膜炎は心臓を包む心膜の急性炎症で、時に心筋炎、心内膜炎を合併します。心膜に急性炎症が起こると、心膜の表面にフィブリンが付着して粗くなり、心膜摩擦音が生じ、次いで心膜腔内に滲出液が貯留して心臓の運動が制限されます。著明な心膜液貯留では急性の拡張不全を招き、心タンポナーデとなります。
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急性心膜炎の原因は
以下の表に示す様に、急性心膜炎は種々の原因によって起こりますが、大部分は全身性疾患の一部あるいは合併症として生じますが、治療や予後は原因によって異なります。
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原因の分類
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解説
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特発性心膜炎
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急性心膜炎のうちで最多(23%)で、原因としてはウイルス感染、過敏反応、自己免疫反応が考えられいますが、原因は不明です。症状は急性に始まり、胸痛、発熱が多く、約半数に上気道感染症状が1〜2週間前に先行します。約25%に胸膜炎を合併し、胸水の貯留がみられます。経過は一般に良好で、数日〜数週間で症状・所見は消退し、大部分は治癒します。時に再発することもありますが、心タンポナーデ、収縮性心膜炎になることはまれです。治療は安静に努め、胸痛に対しては鎮痛薬を使用します。激しい症状を呈する例には、副腎皮質ステロイド薬が有効です。
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感染性心膜炎
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a. ウイルス性心膜炎
コクサッキーウイルス、エコーウイルスやインフルエンザ、ムンプス、ポリオウイルスなどが原因ですが、ウイルスを特定することが困難のことが多く、特発性心膜炎として扱われます。治療は特発性心膜炎と同じです。
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b.細菌性心膜炎(化膿性心膜炎)
ブドウ球菌、肺炎双球菌、連鎖球菌などが原因で、まれですが重症になりやすい。胸部外科手術、外傷後の感染が最も多い。発熱などの全身症状が強い。急速に浸出液が貯留するために、心タンポナーデを生じることが多い。治療としては、強力に抗生物質を使用しながら、外科的に心膜切開、排膿を行います。
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c.結核性心膜炎
最近の頻度は減少しています。大部分の原発巣は肺、その他の臓器です。通常徐々に発症し、微熱、全身倦怠感、食欲不振、体重減少などの不定症状で始まります。しばしば大量の心膜液貯留をきたします。抗結核薬で治療しますが、2/3の例で収縮性心膜炎に移行します。
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d. その他
心膜炎真菌、寄生虫による感染があるがまれです。
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リウマチ性心膜炎
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重症のリウマチ性心炎の部分症状として出現し、リウマチ性心筋炎の約10%に合併します。心タンポナーデや収縮性心膜炎を生じることはまれです。治療はアスピリンに加えて副腎皮質ステロイド薬を使用します。
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尿毒症性心膜炎
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急性尿毒症の18%前後、慢性尿毒症の約50%に起きます。一般に心膜炎の症状は軽く、20〜50%の症例では浸出液の貯留を認めます心タンポナーデになることはまれです。
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癌性心膜炎
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原発性はきわめてまれで、乳癌、肺癌、気管支癌、白血病、悪性リンパ腫などからの転移・浸潤が多い。心膜液貯留、心膜癒着をきたすことがある。治療としては抗癌薬の心膜腔内投与、放射線照射が試みられます。
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心筋梗塞後症候群
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心筋梗塞後2〜6週に、発熱、胸痛で発病し、、自己免疫反応と考えられています。
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心膜切開後症候群
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開心術後1〜8週に、発熱、胸痛で発病し、自己免疫反応と考えられています。
非ステロイド系の消炎鎮痛剤が無効の場合は副腎皮質ステロイド薬用いられます。
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膠原病性心膜炎
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SLEに合併することが多く(10〜30%)、ほかに関節リウマチ(10%)、強皮症(5〜10%)、結節性動脈周囲炎などにも合併します。副腎皮質ステロイド薬が有効です。
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その他の心膜炎
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物理的因子として心外傷、肺ないし縦隔腫瘍に対する放射線照射(照射総量40〜50Gyを超えたとき)に伴う心膜炎、化学物質によるものとして、ヒドララジン(降圧薬)やプロカインアミド(抗不整脈薬)などの薬物に対する過敏反応による心膜炎などがあります。
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急性心膜炎の自覚症状
1)全身症状
発熱、発汗、倦怠感、食欲不振、体重減少などを呈します。
2)胸痛
突然の、あるいは徐々に生じる鋭い胸痛が数時間〜数日間続きます。胸痛は胸骨裏面から左前胸部、肩に放散することが多く、深呼吸、咳嗽、体動、嚥下で増強します。また、体位では仰臥位、左側臥位で増強し、前屈の坐位で軽減します。
3)周辺臓器の圧迫症状
多量の心膜液が貯留すると、気管支圧迫による呼吸困難、反回神経圧迫による嗄声、食道圧迫による嚥下障害や嚥下痛、横隔膜神経圧迫による吃逆(しゃっくり)がみられることがあります。
急性心膜炎の検査
1)聴診による心膜摩擦音
2)心電図の変化:
初期(数時間〜2週間)にはV1とaVRを除くすべての誘導にST上昇がみられ、数日後に上昇したSTが基線に戻り、T波は平低化します。次にほとんどの誘導でT波は陰転化します。大量の心膜液が貯留すると低電位差を示します。
3)胸部レントゲン写真:
多量の心膜液が貯留するとで心陰影は左右に増大し氷のう型を呈します。
4)心エコー:
エコーがみられないスペースが収縮期,拡張期を通して認められます。
5)CT:
CT値より心膜液性状の推測が可能です。
6)心膜試験穿刺:
細菌性、悪性腫瘍が疑われる場合には心膜試験穿刺による細菌学的や細胞学的な検査をおこないます。
急性心膜炎の治療
1)発熱、胸痛が消退するまでは安静をとり、胸痛に対しては非ステロイド抗炎症薬等の鎮痛剤を用います。
2)心タンポナーデの場合には速やかに心膜穿刺や心膜切除術による排液が必要です。
3)原因疾患に対する治療
細菌性では抗生物質、抗結核薬などを用いますが、化膿性では難治のことが多く心膜切開、排膿を必要とすることがあります。特発性心膜炎、心膜切開後症候群、心筋梗塞後症候群では副腎皮質ステロイド薬が著効をしめすことがあります。
急性心膜炎の経過と予後
原因疾患によって異なります。リウマチ性、特発性心膜炎では予後は良好ですが、特発性心膜炎は再発することがあります。結核性心膜炎では収縮性心膜炎を起こす可能性が高く、経過の監視が必要です。
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